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STORY 3 from Japan : 命のバトンは受け継がれる

患者様の体験談

STORY3 命のバトンは受け継がれる 渡部典子さん

渡部(わたなべ)典子さんは今年で67歳になられます。ご主人が1999年に他界され、現在は娘さん家族と一緒に暮らしていらっしゃいます。「孫にパワーを吸い取られていますの。」と、穏やかにおっしゃいながらも、1歳半ばになられるお孫さんの成長の様子が毎日楽しくてしょうがない典子さんです。

典子さんが完全房室ブロックと診断されたのは19歳のころでした。当時は、ペースメーカーが普及していないころでしたので、薬のみの治療でした。階段を上るときや、かけっこのときに少し苦しいときがありましたが、普通に生活する分にはあまり不自由を感じていませんでした。しかし、ご主人との結婚の話が出たときは、自分が心臓病を抱えていることから、躊躇しました。ご主人は「そのうち、人工心臓ができるから大丈夫だよ。」とあっけらかんとおっしゃり、二人は晴れてご結婚されることになりました。結婚後、主治医から出産を止められていましたが、やはり子供はほしいと考え、産院で娘さんを帝王切開で出産しました。
典子さんが、ペースメーカーを植え込むことになったのは、1975年、35歳のときでした。きっかけは、その前年に見つかった子宮筋腫の手術でした。主治医に完全房室ブロックがあることを伝えたところ、循環器の先生をご紹介頂き、ペースメーカー植込み手術を行なうことになりました。しかし、周りに誰もペースメーカーを植え込んでいる人がいなかったので、典子さんはだんだん怖くなり、植え込みを断りました。ところが、翌年2月に具合が悪くなりました。「それまでは(脈拍は)40とか45で打ってたんですよ。それが28くらいに、夜中に・・・視界がもやぁ〜っとしたような感じになり、あぁ、これはもう大変だ!と思いました。」すぐに先生に連絡を取り、ペースメーカーを植え込みました。
ペースメーカーの植込み後、典子さんの世界は一変しました。「頭がはっきりしたというか、世の中がこう、ぱっとしました。それまで普通だと思ってた状態が、やはり良くなかったんですね。」その当時のペースメーカーは、まだタバコの箱くらいの大きさだったので、右胸に植え込んだペースメーカーは重く、体を動かすときに何かと邪魔になりました。また、市販の下着は痛くて着けられず、自分でさらしを作って工夫しました。「今5個目のペースメーカー(ST.JUDE MEDICAL社製)が入ってるんですけど、小さいので皮膚の下にもぐりこんで、どこにあるのかぜんぜん分かりませんよ。毎回植え替えるごとに小さく、薄くなっていきましたね。また、レートレスポンス(体の動きを感知して、レートを上げ下げする)機能をつけていただいたので、一段と生活が楽になりましたよね。」
また、家が基地の近くだったので、送電線や大きなアンテナも多く、ペースメーカーに影響を与えるのでは、と心配でした。「はじめは怖くて外に出るのが嫌だな、と思ってたんですけど、主人が出好きな人だったので、よく外に連れ出されましてね。ああ、大丈夫なんだな、って、徐々に確かめていきましたね。」また、時々起こる期外収縮(不定期に起こる拍動)のせいで気分が悪くなり、夕食の準備もできず、ソファーで横になっていると、当時小学校3年生になる娘さんが、ご飯を作ってくれていました。いつも「大丈夫。」と言ってくださるご主人と、いろいろと心配しながら世話をしてくれる娘さんに支えられて、徐々に気持ちが楽観的に、そして前向きになっていきました。
また、日本心臓ペースメーカー友の会で知り合われた患者様も、元気な方ばかりだったので、とても励まされました。会員の方と協力して2年間、埼玉県支部長も勤めました。「(電磁波関連で)危ないといわれる距離もありますけど、離れれば大丈夫なんですからね。あまり気にしすぎて何も楽しめなくなるのは損ですからね。植え込まれる患者様は、ペースメーカーを入れちゃったから病人になるんじゃなくて、入れたら元気になれる、そう思っていただいたほうがいいですね。」患者様からの相談も受け、今まで励まされる立場だった典子さんですが、逆に励ます立場となりました。

坂を駆け下りるのが大好きなお孫さんを追いかけて、走ったり、抱き上げたりしている典子さんは、最近になって骨密度が上がってきました。「孫に動かされて、健康にしてもらっていますよ。良い時代に生まれてたんだなぁ、と思いますよね。もうちょっと前だったら、この世にいなかったかもしれない。こんな楽しいことをね、味わってられなかったかもしれないじゃないですか。だからやっぱり、医療の最先端技術の恩恵を受けて・・・本当にペースメーカーってすごいなぁ、っと思いますよね。」
典子さんの人生を変えたペースメーカーと、典子さんを支え続けたご主人と娘さん。またその娘さんとだんな様の間に誕生し、典子さんを一層輝かせることになったお孫さんの存在。命のバトンが最先端の医療技術によって、受け継がれていると感じました。

(2009年現在)