監修:神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科部長 麻生 俊英 先生
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| Q1. | ペースメーカーが必要な病気は、どのような病気ですか? |
| A1. | お子さんにペースメーカーを植え込まなければならないケースは大きく2つあります。先天性の完全房室ブロック(刺激伝導系と呼ばれる心房と心室間の電気の流れが完全に途絶えたもの)の場合と、手術の後遺症、合併症の場合です。 |
| Q2. | どんなペースメーカーを植え込むのですか? |
| A2. | 体の大きさとペースメーカーが必要な病気の種類によって、植え込むペースメーカーが医師によって選択されます。 体の大きさによってペースメーカーの植込み方法、植込み部位も違ってきます。小児の場合、SSI型と呼ばれるタイプが選択されることが多く、心室をペーシングしたり、センシングします。もし、植え込み後に心臓の機能が低下してきた場合には、DDD型に交換します。 |
| Q3. | どんな内容の手術ですか? 手術時間はどれくらいかかるのですか? 痛みはないのですか? |
| A3. | 「手術について」をご覧ください。詳しく説明しております。 |
| Q4. | 手術中に考えられる合併症は何がありますか? |
| A4. | 新生児の場合はお母さんのお腹の中にいるときから心音(心拍数)が少ないということが分かっています。その為、お母さんに薬を飲んでもらったり、点滴したりする場合もあります。新生児によっては、生まれてすぐにペースメーカーを入れなければいけないほど心拍数が少ない場合もあり、その場合は、分娩室の隣に医師が待機し、生まれたらすぐに胸を開けて、テンポラリー(一時的なペーシング)のワイヤーを縫い付けて、心拍数を維持します。その後、新生児の容態が落ち着いてから植込み型ペースメーカーの手術を行います。このようにペースメーカーを植え込むまでに心拍数の少ない時間があります。心拍数が少ないということは、VF(心室細動)、VT(心室頻拍)など重篤な心室性不整脈が起こる可能性があります。場合によっては心臓が停止することもあります。 経静脈的にリードを挿入する場合は、「穿孔(リードが血管や心室を貫通すること)」という合併症の可能性があります。 また手術後、時間が経過してから起こる合併症としては、「ペースメーカーポケット感染」というものがあります。体内に異物があると、抵抗力がおちた時に、ばい菌が集まりやすくなり、ペースメーカーの植え込まれている部位の皮膚が赤くなったり、場合によっては、皮膚が破れてペースメーカーがとび出すようなこともあります。感染するとなかなか治りにくいので、ペースメーカーを一旦取り除き、消毒する必要が生じます。そして、消毒後に手術をもう一回やり直すことになります。 |
| Q5. | どれくらいで退院できるのですか? |
| A5. | 経静脈的にリードを挿入した場合には、使用したリードの特徴によって入院期間が変わってきます。心臓の筋肉(心筋)が肥大している場合、肉柱(心室内にある細かい筋肉性のヒダ構造)が少ないことがあります。そうした場合には、スクリューイン・リード(リード先端がらせん状になり、心内膜にねじ込むタイプのリード)を使用します。また、心臓の手術で右心耳を結紮(けっさつ)もしくは切り取っている場合でもスクリューイン・リードを使用します。このように、スクリューイン・リードを使う場合には、しっかりとねじこまれれば、心内膜にねじ込んだリードが外れる可能性は少ないので、早期退院を可能にしている病院もあります。この場合は5日以内で退院可能になる場合もあります。タインド・リード(リード先端にヒゲのようなものが付いているタイプのリード)を使用した場合は、1週間前後で退院することが多いです。 新生児の場合は、1週間から2週間で退院となります。ご両親への教育などが退院前には必要ですので、それに少し時間を費やします。新生児の場合は動きが少ないので、手術後にリードが抜けることは少ないですが、ペーシング閾値(ペースメーカーによる電気刺激で心筋を収縮させることができる最小限のエネルギー)が上昇しやすい場合があります。また、新生児は心拍数が多いので、ペースメーカーの電池が早く消耗します。また、先天性の完全房室ブロックでは、心筋症になる確率が、正常な心臓の人に比べると高いと言われています。そのため、心筋症になっている場合は、その治療も必要になります。 |
| Q6. | ペースメーカーの交換はどれくらいの頻度で行われるのですか。 |
| A6. | 個々の症例に合わせたペースメーカーの設定や、リード抵抗により異なります。 目安としては、新生児や小児の場合、2年から7年間使用したペースメーカーは、電池が消耗して交換することになります。新生児の場合は運動をしなくても速い心拍数が必要で、ペースメーカーの設定レート(1分間の電気刺激回数)を高く設定します。大人であれば60回/分というのが一般的ですが、子供の場合、100回/分、120回/分にすることもあります。このように電気刺激を行う回数が多いので、ペースメーカーの電池はそれだけ消耗することになります。 |
| Q7. | 病院にはどのくらいの頻度で通えばよいのですか? |
| A7. | 病院によって異なりますが、一般的には2〜4ヶ月の間隔でペースメーカーの機能チェックと各種設定がその患者さんの心臓に合っているか、電池残量が十分か、リードに異常がないか、などを外来で詳しく調べます。電池寿命が短くなれば、毎月のペースメーカーチェックとなり、完全に電池が消耗する前に、新しいペースメーカーへ交換することになります。ちなみに、ペースメーカーチェックそのものに要する時間は、20分以内です。ペースメーカーチェックを行う間隔に関しては、主治医の指示に従ってください。 |
| Q8. | ペースメーカーチェック(点検)ではどのようなことをするのですか? |
| A8. | プログラマーと呼ばれるコンピューターを用いて、植え込まれているペースメーカーの情報を体外から読み込み、ペースメーカーの機能チェック、電池残量のチェック、リード抵抗の測定、不整脈に関する情報収集を行います。また、同時に心臓を収縮させるペースメーカーの電気刺激が適切なエネルギー量か、心臓の電気信号を適切に感知しているか、などを調べます。お子さんが安心して検査を受けられるように、お母様やお父様に同席していただくこともあります。 |
| Q9. | 植え込み後、日常生活上の制限など、注意することはありますか? |
| A9. | どこにペースメーカーを植え込んだかによって、注意する運動が異なります。 ペースメーカーを腋の下に入れている場合は、激しく腕をぐるぐる回す運動は避けたほうが良いでしょう。例えば、右腋の下に植え込んでいる場合、物を投げる運動は避けたほうが良いでしょう。腹部に植え込んだ場合は、鉄棒やドッジボールをしない方が無難です。 また、ご両親はお子さんの脈を測る習慣をつけましょう。不測の事態が発生した時に、ペースメーカーがきちんと作動しているか否かを判断する一助となりますし、不規則な脈を発見できることもあります。 |
| Q10. | リードが切れたときはどうすれば良いのですか。 |
| A10. | リードが断線した場合の対応については、お子さんの自己の脈がどのくらいあるかによって違います。自己の脈がほとんどない場合はその場で失神したり、最悪の場合は心停止してしまう可能性があります。その場合、心臓マッサージが必要になります。意識がなく、脈がふれない(心停止)と思われた時は、心臓マッサージを施行しながら、119番に電話して下さい。 リードが断線するのは、多くの場合リードが長期間に亘り屈曲したり、圧迫を受け続けたためです。また、ペースメーカーを腹部に植え込んだ場合にも切れやすくなることがあります。リードは植え込み部位である腹部と心臓をつないでいます。しゃがむと肋骨弓(肋骨の一番下の骨)にリードが当たり、曲がります。それが何度も繰り返されることでリードが切れやすくなります。腹部に植え込まれた場合は、先にも述べました通り、鉄棒をしてはいけません。リードのみならず、ペースメーカー本体にも当たり、ペースメーカーを破損してしまう可能性があります。しかし、ペースメーカーを植え込むときは、腹部の方が開胸するよりも侵襲は少ないですから、骨からなるべくリードを離して植え込めば、断線の心配はない、と考える先生もいらっしゃいます。 |
| Q11. | 胸が「ドキドキする」と感じるときはどうすれば良いですか? |
| A11. | 胸がドキドキすると感じることが思春期にはよくあります。「不定愁訴(体のどこが悪いのかはっきりしない訴えで、検査をしてもどこが悪いのかはっきりしないもの)」で、24時間ホルター心電図(携帯型心電図)でも異常が発見されない、ということがあります。中学生、高校生になると本人がペースメーカーに関連付けて、症状を訴えられることがあります。主治医にご相談いただき、ペースメーカーをチェックして、異常が無いことを確認した上で、ご両親が注意深く経過を観察しましょう。 |
| Q12. | 学校の先生との連携は、どのような点に注意する必要がありますか? |
| A12. | 学校の先生には、お子さんにペースメーカーが植え込まれていることを絶対に知らせておく必要があります。鉄棒やドッジボールなど、特に体育の運動で十分な配慮が必要だからです。 |
| Q13. | 食事制限はあるのですか? |
| A13. | 食事制限はありません。 |
| Q14. | 風邪など、病気にかかった時に処方される薬は普通に飲んでも問題はありませんか? |
| A14. | 基本的に問題はありません。詳しくは主治医の先生にご相談下さい。 |
| Q15. | 旅行をしても問題ありませんか。 |
| A15. | 特に問題ありません。しかし、飛行機の搭乗に先立つ手荷物検査の際、金属探知機が反応したり、ペースメーカーの作動に影響を及ぼす可能性があります。金属探知機を通過する前に、係官にペースメーカー手帳を提示し、ペースメーカー患者であることを申告して下さい。それでも、ゲートを通過せざるを得ない場合は、ゲート内で立ち止まらず、普通に歩く速さでゲートを通過して下さい。もし、金属探知機が警告を発した場合は、ハンディタイプの金属探知機での検査を避け、手によるボディチェックを要望しましょう。ペースメーカー手帳を発行している会社にもよりますが、英文でその旨を手帳に記載している場合もありますので、外国の空港ではペースメーカー手帳の英文ページを提示しましょう。旅行中も必ずペースメーカー手帳を携帯するようにしましょう。 |
| Q16. | 携帯電話を使用しても問題ありませんか? |
| A16. | 基本的にペースメーカーに大きく影響することはありませんが、以下はペースメーカーの機種を問わずペースメーカー全般について、安全を保つための基準となっています。
携帯電話、PHS及びコードレス電話(以下、携帯電話等)を使用する場合は、以下の事項をお守りください。
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| Q17. | 寝ている時に、ペースメーカーはどんな動きをしているのですか? |
| A17. | 患者さんが寝ている時も、起きている時も、心臓の動きを観察し、作動しています。 24時間休みなく、必要な時は電気刺激を心臓に与えることで、心臓を収縮させます。 |
| Q18. | ペースメーカーを植え込まれている患者同士の情報交換はどのようにすれば良いのですか? |
| A18. | ペースメーカー患者様で組織されている以下の会がありますので、ご参考下さい。 |
| Q19. | ペースメーカーの植え込み後、親はどのように精神的なサポートをしていけばよいのですか? |
| A19. | ご両親はお子さんがペースメーカーを植え込むことによって、「日常生活の制限」に対し、敏感になる可能性があります。「このくらい気をつけていれば大丈夫」、と自信を持って言えるくらい勉強されることをお奨めします。 お子さんは必ず、ご両親を見ています。ご両親が笑えば安心します。ご両親が心配そうな顔をするとお子さんは不安になります。科学的にまだ証明されていませんが、どっしりと構えているお母様のお子さんは回復が早いそうです。いつも心配、不安とおっしゃるお母様のお子さんは、逆に回復が遅くなることがあるそうです。この場合に多いのは、お父様の協力が無く、お母様お一人で抱え込んでいらっしゃる場合だそうです。お父様の助けは必ず必要です。 ご両親はご自分のことを責めがちですが、お子さんにペースメーカーが必要になったのは誰のせいでもありません。過去を振り返らず、前を向いて、そのお子さんのこれからのことを考えていきましょう。 |
